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胸腺は、縦隔(じゅうかく)と呼ばれる部位にあり、実際には身体のほぼ中央で胸骨の後ろ、心臓の前面にある小さな臓器です。
あまりなじみのない臓器ですが、胎児から幼児にかけては身体の免疫をつかさどる重要な働きをもっています。
しかし、成人になるとその機能を終えて退化します。
胸腺腫は、この退化した胸腺の細胞から発生する腫瘍です。
胸腺腫は自己免疫疾患と呼ばれる免疫機能の異常と関係することもあります。
その代表的なものが、全身の筋力が低下する重症筋無力症(じゅうしょうきんむりょくしょう)です。
胸腺腫は、結合組織の被膜でおおわれ、比較的ゆっくりと増殖し転移も極めておこりにくいのですが、進行すると周囲の肺、心臓、大血管へ浸潤したり、播腫(はしゅ)といって胸腔へ種をまくように拡がっていきます。
極めてまれですが、胸腺腫の中にはかなり悪性度の高いものもみられ、これらは胸腺がんと呼んで区別しています。
胸腺腫の発生は、30歳以上の成人にみられ、男女差はありません。
胸腺腫は比較的まれな疾患です。
国立がんセンタ-においても、30年間に約100例の切除症例がみられますが、同時期に切除された肺がんが3000例を超えることを考えると、その頻度のおおよその見当がつくと思います。
小児での発生はさらにまれです。原因については、明確なものはわかっていません。
前に述べた免疫異常と関連した重症筋無力症、赤芽球癆(せきがきゅうろう)、シェーグレン氏病などを合併することが知られています。
胸腺腫に伴う症状は、2つに分けて考えることができます。
腫瘍そのものに起因する症状と、免疫異常などの合併症による症状です。
胸腺は、成人においては機能的に退化した組織であることから、ここに発生する初期の胸腺腫で症状があらわれることはまれです。
初期の胸腺腫の多くが、定期検診などで撮られた胸部X線写真の異常で偶然発見されます。
胸腺腫による症状は、腫瘍が大きくなって周囲の臓器を圧迫したり、浸潤して破壊するためにおこります。
具体的には、胸痛、咳、喀痰(かくたん)、呼吸困難、上半身(特に顔面)、頸部のうっ血、浮腫などです。
しかし、これらの症状はかなり進行してはじめてあらわれてくるもので、無症状の場合もかなり多いようです。
一方、合併症によるものとしては、先にも述べた重症筋無力症、赤芽球癆といったものが代表的なものです。
重症筋無力症の自覚症状としては、まぶたが下がったり、ものが2つに見える、手足の筋力低下、飲み込むことが困難などがあります。
赤芽球癆では、貧血症状がみられます。
このような合併症が先にあらわれる場合には、胸腺腫自体は後から全身を精査してはじめて発見されます。
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